生前贈与と形見分け
ここでは、生前贈与について見ていきます。生前贈与については生前対策の項でも触れましたが、相続人にとって不利な生前贈与が行われている場合もあるでしょう。
たとえば、実際に残された相続財産を調べてみたら、被相続人の遺産は第三者に全て生前贈与されていた。そんなこともあるかもしれません。
ただし、この贈与が相続開始前の一年以内であった場合は、その財産は遺産の対象になります。そのため、相続人は遺留分を減殺請求することができます。この場合の遺留分は、生前贈与された遺産を含んで計算されます。
これは、相続人に贈与されていた場合でも同様です。ただ、相続人への贈与は相続における特別受益とみなされます。
特別受益とは、特定の相続人が、生前の被相続人から特別の援助を受けた場合のことを言います。これを相続分として計算しないと、ほかの相続人との間に不公平が生じてしまいます。つまり、特別受益は贈与ではなく相続の前借りとみなされるということです。
これは、遺贈の場合でも同様です。相続分のほかに余分に与えたい場合には、その旨が遺言に明記されていなければなりません。
生前贈与のように相続に含まれるものとして、形見分けがあります。ポイントは形見分けの品が、遺産に含まれるか否かにあります。
一般的に形見分けは儀礼的に行われるもので、故人の身に付けていた衣服やアクセサリー、趣味のコレクションなどが対象になり、縁故のあった人がそれを受け取ることになります。ただ、高価な物や届出が必要な物などは相続の対象になると考えるほうが自然です。
形見分けの品は相続人全員の共有の相続財産です。遺産分割で協議されることがないために、形見の品は誰の物でもないような気がしてしまいますが、法律上はそれも相続人に相続されるものです。ですので、勝手に形見分けをするとトラブルになることがあります。相続人全員の同意が得られる場合を除いて、形見分けは待ったほうがいいでしょう。