遺言通りに相続財産を分割しなくてはならない?
遺言書がない場合、遺言書に具体的な相続の指示がない場合などは、原則的に共同相続人が集まり、誰が何を相続するかを具体的に決めるために遺産分割協議が必要となります。これは遺言書で遺言執行人の指定がなければ誰が協議を取り仕切っても問題はありません。
ここで重要な点は取り仕切る人間が誰かよりも、相続人が全員参加することにあります。ひとりでも相続人が参加していない遺産分割協議は無効となり、遺産分割協議のやり直しになりかねないからです。すべての相続人が同じ場所、同じ時間に同席する必要はありません。出席そのものが難しいのであれば相続人に文書を回覧させて参加の形をとっても問題はありません。
相続人がすべて明らかになると同時にいよいよ遺産分割協議となります。遺言があれば遺産分割協議は必要ないと考える人もいるかもしれませんが、実際は被相続人が確認できなかった財産、遺言でカバーしきれない財産があることは少なくありません。
遺言のなかで遺言執行者が決められていなければ遺言内容とはまったく異なる遺産分割も可能となります。この場合、遺言の利益を受ける者の自由意思による全員の同意があることが条件となります。これは相続人には相続した遺産を自由に処分できる権限が認められていることにあります。
遺産分割協議後に遺言を発見した場合ですが、まず、遺言には時効がありません。ですから、たとえ遺産分割が終了していても、遺言がみつかればその遺言に記載された内容が優先されます。つまり、すでに行われた遺産分割は無効となります。ただし、全員の相続人が合意すれば遺言の内容と異なる遺産分割でも問題ありません。
これは、発見された遺言書のなかに、相続人以外の第三者への遺贈が指定されている場合も同じです。すでに相続した遺産を処分してしまった場合は、分割される割合に応じた金銭の支払いなどで解決することになります。